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新しい相続法が本格的にスタートします!

 

以前からお知らせしてきたとおり,今般民法が改正され相続法のルールが大きく変わる事になりました。
改正された相続法の内,自筆証書遺言の方式緩和は2019年1月13日から既にスタートしていましたが,いよいよ2019年7月1日から新しい相続法が本格的にスタートすることになります。
そこで,今回はその具体的内容について簡単にご紹介したいと思います。

2019年7月1日からスタートする制度は,次のとおりです。

① 遺産分割前の預貯金の払戻し制度
② 遺留分制度の見直し
③ 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(持戻し免除の意思表示の推定規定)
④ 特別の寄与の制度の創設
⑤ 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲
⑥ 遺言執行者の権限の明確化等
⑦ 相続の効力等に関する見直し

 

これらの制度の具体的内容は,次のとおりです。

 

① 遺産分割前の預貯金の払戻し制度

平成28年12月19日の最高裁大法廷決定は,預貯金債権について,遺産分割の対象になるとしましたため,これまでは遺産分割が終了するまでの間,相続人単独では預貯金の払戻しをするこができませんでした。
しかし,これでは葬儀費用や管理費,生活費など相続人の資金需要に対応することができず不都合が生じていました。そこで,預貯金債権の内,下記計算式に基づいて算出された金額については,遺産分割前でも預貯金の払戻しを受けることができる制度が新設されました。

【計算式】 
単独で払戻しをすることができる額 = 相続開始時の預貯金債権の額×1/3×(当該払戻しをする共同相続人の法定相続分)
※ただし,1つの金融機関から払戻しが受けられるのは150万円まで。

また,併せて家事事件手続法の保全処分の要件が緩和され,仮払いの必要性があると認められる場合には,他の共同相続人の利益を害しない限り,家庭裁判所の判断により仮払いが認められるようになりました。
これらにより,相続人の資金需要に対応することができるようになりました。

 

② 遺留分制度の見直し

遺留分は,兄弟姉妹以外の相続人が一定割合の遺産を相続することを保障した制度です。これまで遺留分を侵害された相続人は,遺留分減殺請求権を行使することで侵害された遺留分を取り戻すことができました。
しかし,遺留分減殺請求権を行使すると,相続人間で複雑な共有状態となり,遺産の処分や事業承継等に支障が出る事態も発生しました。
そこで,新しい制度では,遺留分を侵害された相続人は,遺贈や贈与を受けた者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の請求(遺留分侵害額請求)をすることできるようなりました。そして,遺留分侵害額請求を受けた者がすぐに金銭を準備することができない場合には,裁判所に対し,支払期限の猶予を求めることができることとして,遺留分侵害額請求を受ける側の利益にも配慮をしています。

 

③ 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(持戻し免除の意思表示の推定規定)

これまでは,被相続人が配偶者に居住用不動産を贈与や遺贈をしたとしても,原則として,遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われ,その価値分を考慮した遺産分割の計算(持戻し計算)をするため,配偶者が最終的に取得できる遺産の総額は変わらない結果となりました。これでは,せっかく被相続人が遺贈等を行ったことが無意味となってしまいかねません。
そこで,婚姻期間が20年以上の夫婦間で居住用不動産の遺贈又は贈与がなされた場合は,遺産分割において持戻し計算をしなくてよいとの意思表示をしたものと推定し,原則として,遺産分割において配偶者の取得分が増えることとなりました。

 

④ 特別の寄与の制度の創設 

現行法では,被相続人の療養看護に尽くした人がいた場合,相続人であれば相続分を増額することで,その貢献に報いることが可能です(寄与分)。
しかし,寄与分は,相続人にしか認められないため,相続人以外の人が被相続人の療養看護に尽くしても,相続財産を取得することができませんでした。
そこで,相続人以外の親族(配偶者,6親等内の血族,3親等内の姻族)が被相続人の療養看護に尽くした場合,相続人に対して金銭の請求ができるようになりました。

 

⑤ 遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲

遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合,共同相続人全員の同意があれば,当該処分された財産を遺産分割の対象に含めることができるようになりました。共同相続人の1人又は数人が当該処分をした場合には,当該処分をした共同相続人については,同意は不要です。

 

⑥ 遺言執行者の権限の明確化等

遺言執行者の一般的な権限として,遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は相続人に対し直接にその効力を生ずることを明文化するなど,遺言執行者の権限や行為の効果が明確化されました。

 

⑦ 相続の効力等に関する見直し

特定財産承継遺言(相続させる遺言の内,遺産分割方法の指定として特定の財産の承継が定められたもの)等により承継された財産については,登記等の対抗要件なくして第三者に対抗することができるとされている現行法の規律を見直し,法定相続分を超える部分の承継については,登記等の対抗要件を備えなければ第三者に対抗することができないことになりました。

以上が2019年7月1日からスタートした新しい相続法の概要です。
今後も,配偶者居住権の新設自筆証書遺言の保管制度が予定されていますのでご注意ください。

 

 

 

※改正相続法の施行期日
(1)  自筆証書遺言の方式を緩和する制度 2019年1月13日
(2)  原則的な施行期日           2019年7月 1日
(3)  配偶者居住権の新設                 2020年4月 1日
(4) 自筆証書遺言の保管制度            2020年7月10日

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