これまでは自筆証書遺言を作成する場合には全文自書する必要がありましたが,改正により「財産目録」についてはパソコンで目録を作成したり,通帳等のコピーを添付すればよいこととなりました。(財産目録や添付資料には署名押印が必要です。)
全文パソコンで作成することはできず,遺言書の本文についてはこれまでどおり手書きによる作成が必要です。
【自筆証書遺言の方式緩和】
普通方式の遺言には,①自筆証書遺言(民法968条),②公正証書遺言(民法969条),③秘密証書遺言(民法970条)があります。
この内,①自筆証書遺言については,これまで全文を自書して作成することが法律上要求されていました。しかし,全文を自書することは,ご高齢の方や財産をたくさんお持ちの方には相当な負担となっていました。また,財産目録の内容を書き間違ってしまい最悪の場合遺言を執行できないという結果を招いてしまうこともありました。
この度,民法が改正され,2019年(平成31年)1月13日以降に作成される自筆遺言証書については方式が緩和され自筆遺言証書に添付する財産目録については自書でなくてもよくなり,財産目録の各頁に署名押印することで足りるようになりました(新民法968条2項)。
具体的なイメージとしては,財産目録をパソコンで作成してそれに署名押印をする,通帳や登記事項証明書(登記簿謄本)のコピーを添付してそれに署名押印をするというものです。ただし,その余の部分については,これまでどおり全文自書する必要があるのでご注意ください。
この改正により,作成の負担が相当程度軽くなったことから,今後自筆証書遺言の利用が増えることが予想されます。ただ,自筆証書遺言に厳格な要式性が要求されることには変わりありませんから,せっかく作成した遺言が無効になってしまう危険性はこれまでどおりあります。そのため,遺言を作成しようと思ったら一度は弁護士に相談することをおすすめします。
※改正相続法の施行期日
①自筆証書遺言の方式を緩和する制度 2019年1月13日
②原則的な施行期日 2019年7月 1日
③ 配偶者居住権の新設 2020年4月 1日
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《参考》
新第968条
1 自筆証書によって遺言をするには,遺言者が,その全文,日付及び氏名を自書し,これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第997条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一部の目録を添付する場合には,その目録については,自書することを要しない。この場合において,遺言者は,その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場合にあっては,その両面)に署名し,印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は,遺言者が,その場所を指示し,これを変更した旨を付記して特にこれに署名し,かつ,その変更の場所に印を押さなければ,その効力を生じない。