交通事故に関する問題

交通事故に関してよくある質問

交通事故で怪我をした場合,どのような損害を賠償してもらえるのでしょうか?

交通事故で怪我をした場合,被害者は次のような損害を賠償してもらえます。

◎積極損害

1 治療関係費

症状固定までにかかった治療費は,原則として全額損害として認められます。
症状固定後の治療費や手術費は,多くの場合損害として認められませんが,症状の悪化を防止するのに必要である場合など相当性が認められる場合には,損害として認められる場合があります。

柔道整復(接骨院,整骨院),鍼灸,マッサージ等の施術費は,医師の指示がある場合などに認められることがあります。

2 付添費用

入院や通院に付添人を必要とする場合,職業的付添人は実費全額,近親者が付き添ったときは,入院付添は1日6500円程度,通院付添は1日3300円程度が損害として認められます。
いずれも医師の指示が必要ですが,被害者の年齢や症状等により,付添いの必要性が認められれば,医師の指示がなくても損害として認められることがあります。

3 将来介護費

医師の指示や被害者の症状等により将来の付添介護の必要性が認められれば,職業的付添人は実費全額,近親者付添人は1日8000円程度が損害として認められます。
遷延性意識障害(植物状態といわれる状態)や高次脳機能障害,脊髄損傷など重篤な後遺障害がある場合に問題となることが多いです。

4 雑費

入院した場合,1日あたり1500円程度が入院雑費(日用雑貨品や消耗品の代金など)が損害として認められます。

5 通院交通費

公共交通機関(バス,電車,地下鉄等)を利用した場合は利用料金,自家用車を利用した場合は実費相当額が損害として認められます。
タクシー料金は,症状等に照らして必要性が認められる場合,損害として認められます(領収証が必要となりますので必ずもらうようにしてください)。

6 装具・器具等購入費

症状等に照らして必要性が認められる場合,松葉杖,車椅子,義歯,義手,義足,電動ベッド等の購入費用が損害として認められます。また,相当期間で交換の必要があるものは将来の購入費用も損害として認められます。

◎消極損害

1 休業損害

事故のため,仕事を休まざるを得なかったことによる損害です。事故前の収入実績から基礎収入を算定し,これを休業日数に乗じて算出することになります。

算定方式: 基礎収入額×休業日数

ア 給与所得者
通常,事故前3か月の平均賃金額を基準として基礎収入を算定します。
勤務先から「休業損害証明書」の発行を受けて,源泉徴収票や所得証明書とともに証明を行うことになります。有給休暇を利用した場合,減収はありませんが,損害として認められます。
また,休業により賞与の減額が生じている場合は,賞与減額分も損害として認められます。勤務先から「賞与減額証明書」の発行を受けて損害額を算定することになります。

イ 事業所得者
通常,前年度の収入を基準として基礎収入を算定します。前年度の確定申告書により証明することになります。

ウ 会社役員
通常,労務提供の対価として支払われている部分の減収は損害として認められますが,会社の利益配当と認められる部分は損害として認められません。

エ 家事従事者
通常,賃金センサスを基準として基礎収入を算定します。例えば,女性の場合,賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金額を基準とします。
家事労働を行いながら,パートタイマーやアルバイト等に従事するいわゆる兼業主婦の場合,それらの労働による現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基準として基礎収入を算定します。
家事労働の場合,休業期間の厳密な特定が難しいため,事故時から症状固定時までをいくつかの期間に分け,例えば入院期間していた1か月間は100%,その後3か月間は70%,続く3か月間は50%の家事労働の制限があったとして休業損害を算出する方法をとることがあります。

オ 無職者
無職者は,事故による現実の収入源がないため,原則として休業損害は認められませんが,例えば就職が内定している場合や事故直前に失業し,就職活動中であった場合など事情があれば認められることがあります。

2 後遺障害による逸失利益

事故による後遺障害のため,労働能力が低下(喪失)したことによって事故が無ければ得られたであろう将来の収入(逸失利益)を損害として算定するものです。
逸失利益の算定は,基礎収入額,労働能力喪失率,労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数を乗じて算出します。

算定方式:基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

① 基礎収入

ア 給与所得者
事故前の収入を基礎として算出するのが原則ですが,現実の収入が賃金センサスの平均額より低い場合,将来において平均賃金が得られる蓋然性があれば,平均賃金を基礎とします。

イ 事業所得者
通常,事故前の収入を基準として基礎収入を算定します。

ウ 会社役員
通常,労務提供の対価として支払われている部分は基礎収入として認められますが,会社の利益配当と認められる部分は基礎収入として認められません。

エ 家事従事者
通常,賃金センサスを基準として基礎収入を算定します。例えば,女性の場合,賃金センサスの女子労働者の全年齢平均賃金額を基準とします。
家事労働を行いながら,パートタイマーやアルバイト等に従事するいわゆる兼業主婦の場合,それらの労働による現実の収入額と女性労働者の平均賃金額のいずれか高い方を基準として基礎収入を算定します。

オ 学生・生徒・幼児等
通常,賃金センサスの男女別全年齢平均賃金額を基準として基礎収入を算定します。
なお,女子の年少者については,女性労働者の全年齢平均を基礎収入にはせず,男女を含めた全労働者の全年齢平均賃金を基礎収入とするのが一般的です。

カ 無職者
労働能力と労働意欲があって,就労の蓋然性がある場合には,失業前の収入や賃金センサスを参考に基礎収入を算定します。

② 労働能力喪失率
労働能力の低下の程度を労働能力喪失率といい,労働能力喪失率は,後遺障害の各等級に応じて設定されている労働能力喪失率表(→こちら(PDF))を参考にして決定されます。

③ 労働能力喪失期間に対応する中間利息控除係数

ア 労働能力喪失期間
後遺障害によって労働能力が喪失する期間は,原則として症状固定日から67歳までの期間となります。なお,未就労者の場合は,18歳又は大学卒業時から67歳までの期間となります。また,症状固定時から67歳までの年数が簡易生命表の平均余命の2分の1より短くなる場合は,平均余命の2分の1が労働能力喪失期間となります。

イ ライプニッツ係数
後遺障害による逸失利益は,事故が無ければ得られたであろう将来の収入(逸失利益)を損害として算定するものなので,本来であれば将来に得られる利益を現時点で一括して受け取ることになります。これをそのまま受け取ることを認めると,将来の利息分についても被害者が受け取れることになって不公平であるという考え方から,中間利息を控除して現時点における損害額に評価し直すということが行われています。
中間利息を控除するには,ライプニッツ係数とホフマン係数を用いる方法がありますが,実務上はライプニッツ係数(※ライプニッツ係数表→こちら(PDF))によることが多いです。

3 死亡による逸失利益

事故によって被害者が亡くなったことにより,事故が無ければ得られたであろう将来の収入(逸失利益)を損害として算定するものです。

算定方式:基礎収入額×(1-生活費控除率)×就労可能年数に対応するライプニッツ係数

① 基礎収入
後遺障害による逸失利益の「基礎収入」の項目をご参照ください。

② 生活費控除率
事故が無ければ得られたであろう将来の収入(逸失利益)には,被害者が生活費として支出するはずであった費用も含まれています。そこで,生活費部分は,逸失利益から控除することが行われています。なお,原則として税金は控除されません。
生活費の控除率は,一般に次のような基準がとられています。

ア 被害者が一家の支柱の場合
被扶養者1人の場合・・・・・40%

被扶養者2名以上の場合・・・30%

イ 被害者が女性(主婦,独身,幼児等を含む)の場合・・・30%

ウ 被害者が男性(独身,幼児等を含む)・・・50%

 

③ ライプニッツ係数

後遺障害による逸失利益の「ライプニッツ係数」の項目をご参照ください。

◎慰謝料

1 死亡慰謝料

死亡による慰謝料額は,一般に次のような基準がとられています。ただし,この基準は一応の目安であり,具体的な事情に応じて増減します。

① 被害者が一家の支柱の場合・・・2800万円
② 被害者が母親,配偶者の場合・・2500万円
③ その他・・・・・・・・・・・・2000万円~2500万円

2 傷害慰謝料(入通院慰謝料)

入院や通院の期間等に応じて慰謝料を請求することができます。いくつか基準がありますが,例えば日弁連交通事故相談センター東京支部の損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)では,次のような基準がとられています。
通常は,「別表Ⅰ」が使用され,むち打ち症で他覚症状が無い場合には,「別表Ⅱ」によって慰謝料が算定されることになります。ただし,これは一つの目安であり,傷害の部位や程度等によって,この基準を修正します。

※入通院慰謝料・別表Ⅰ→こちら(PDF)

※入通院慰謝料・別表Ⅱ→こちら(PDF)

3 後遺障害慰謝料

事故による後遺障害の等級に応じて慰謝料を請求することがあります。いくつか基準がありますが,例えば日弁連交通事故相談センター東京支部の損害賠償額算定基準(通称「赤い本」)では,次のような基準がとられています。

■後遺症慰謝料■

第1級      2800万円
第2級      2370万円
第3級      1990万円
第4級      1670万円
第5級      1400万円
第6級      1180万円
第7級      1000万円
第8級       830万円
第9級       690万円
第10級      550万円
第11級      420万円
第12級      290万円
第13級      180万円
第14級      110万円

交通事故に遭い治療中なのですが,加害者が契約する任意保険会社からそろそろ症状固定の時期が来ているので,今月末で治療費の支払いをストップすると言われてしまいました。どう対応したらよいでしょうか?

症状固定とは,これ以上治療を継続しても症状の回復が望めない状態をいいますが,症状固定かどうかを判断するのは保険会社の担当者ではないため,まずは主治医とよく相談して症状固定かどうかを判断しなければなりません。

主治医と相談した結果,これ以上治療の継続する必要がないということになれば,障害等級認定手続に進むことになります。

一方,主治医が治療を継続する必要があると判断した場合は,その旨の診断書等を作成してもらい保険会社に提出して治療費の支払を継続する交渉を行うことになります。
それでも保険会社が治療費の支払いを打ち切った場合,保険会社による治療費の支払いは保険会社が任意に行っているものですから,原則に戻ってご自身が一旦支払って,後に裁判等を通して請求することになります。
その場合,治療の継続が必要であると主治医が診断したことが重要となりますので,やはり診断書等を作成しておくべきでしょう。

加害者が契約する任意保険会社が示談を提案してきたのですが,示談書の金額が妥当かどうかが分かりません。

交通事故の損害賠償基準には様々なものがあり,任意保険会社が提案している示談額は,あくまで任意保険会社の支払基準をもとに算出したものにすぎません。
そのため,訴訟になった場合の基準よりも相当低い基準で提案していることが多いです。

そして,一般に弁護士が代理をしていない場合,任意保険会社は任意保険会社の支払基準が妥当だとして,その示談額から大きく増額するような提案はしてきません。

当事務所では,任意保険会社が提案している示談額が裁判基準と比べてどの程度金額が異なるのか損害額を算出してご提示できますので,一度ご相談ください。

後遺障害等級10級と認定されて,加害者が加入する任意保険会社と示談交渉中なのですが,保険会社からは相当低い金額を提示されています。弁護士に依頼するにしても,まずは自賠責保険から支払いを受けたいのですが,保険会社は最終的な示談をしないと支払えないと言って応じてくれません。今後どうしたらよいのでしょうか。

後遺障害の認定手続には,
①被害者自身が自賠責保険会社に被害者請求する方法 と,
②加害者が契約している任意保険会社を通じて事前認定を受ける方法
があり,おそらくご相談者の方は,②の事前認定の方法により後遺障害等級の認定を受けたのだと思われます。

事前認定は,任意保険会社が認定手続を行ってくれるため,被害者自身が資料や書類を揃える必要がなく,被害者にとってメリットが大きいように思えますが,今回のように,後遺障害等級の認定を受けたとしても,先に自賠責保険金の支払いを受けることができないというデメリットがあるので注意が必要です。

最終的な示談をせずに自賠責保険金を受け取りたいのであれば,示談交渉とは別に,自賠責保険会社に対して請求するのがよいと思います。詳しくは弁護士にお尋ねください。

弁護士費用はすべて自分が支払わなければならず,加害者には請求できないのですか?

現在の制度では,自分の頼んだ弁護士の費用は自分で負担することになっており,訴訟を提起して勝訴したとしても,相手方に弁護士の費用を請求できないのが原則です。

ただし,交通事故のような類型の訴訟では,損害額の1割程度を弁護士費用として認められることが多いです。
そのため,その限度で弁護士費用を加害者に請求することができるといえます。