労働に関する問題

解雇

現行法上,様々な法令により労働者の解雇は制限されています。例えば,労働契約法16条は「解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,その権利を濫用したものとして,無効とする。」といわゆる権利濫用法理によって解雇を制限しています。これらは,使用者が単に労働者を気にくわないなどといった身勝手な理由で解雇することを防ぎ,労働者を守るためのものです。

例えば,使用者が経営不振等経営上の理由から労働者を解雇する場合を「整理解雇」いいますが,「整理解雇」が認められるには,判例上,

  1. 解雇の必要性
  2. 解雇回避努力を尽くしたこと
  3. 解雇する人員の選定に合理性があること
  4. 十分な説明や協議を行ったこと

の4要件が必要であるとされています(整理解雇の4要件)。

また,労働者が懲戒事由にあたる行為をしたとしても,直ちに懲戒解雇が有効となるわけではありません。懲戒解雇が,労働者の行為の性質・態様その他の諸事情に照らして見たとき,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当な範囲を超えている場合には,懲戒権の濫用として無効となります(労働契約法15条)。

懲戒解雇が有効となるためには,

  1. 懲戒解雇事由が就業規則に定められていて,その就業規則が労働者に周知されていること(行為後に定められた懲戒事由に基づく懲戒処分や既に懲戒処分がなされた行為について重ねて行う懲戒処分はできません)
  2. 労働者に懲戒事由があること
  3. 平等な取り扱いであること(他の労働者と比べて不平等な取り扱いがなされていないこと)
  4. 規律違反の種類・程度その他の事情に照らして相当なものであること(懲戒解雇という大きな不利益を与えてもやむを得ないこと)
  5. 適正手続を経ていること(本人に弁明の機会を与えていること等)

が必要です。

これらの要件を満たさない懲戒解雇は無効となります。

以上のように,労働者の解雇はそう簡単に認められるものではありません。そのため,勤務先から解雇を告げられた場合,すぐに弁護士に相談することをおすすめします。