ニュース

Q.最近兄が亡くなりました。兄は未婚で子どもはいません。また,両親や祖父母は既に他界しています。このような場合,私たち兄弟姉妹が相続人になると聞きましたが,兄弟姉妹の中には死亡したり連絡が取れない者もいます。どのようにして遺産分割協議を進めたらよいでしょうか。

 

遺言がない場合,相続人全員において,遺産分割協議を行う必要があります。
そのため,まずは誰が相続人になるのか確定していきます。

 

●法定相続人の順位及び範囲
相続人の順位及び範囲は,民法により次のように定まっています。
相談者の場合,お兄さんには,配偶者,子,両親等の直系尊属がいませんので,相談者を含む兄弟姉妹が相続人になります。

※配偶者…必ず相続人となります

相続順位 血族関係 代襲相続
第1順位 ○(再代襲あり)
第2順位 直系尊属
第3順位 兄弟姉妹 ○(再代襲なし)

 

 

●代襲相続
被相続人よりも先に相続人となるべき者が死亡などの理由に相続権を失った場合に,その者の子が代わりに相続することを代襲相続といいます。
相談者の兄弟姉妹の中に既に亡くなっている方がいるということなので,その方に子どもがいる場合,その甥や姪が相続人になります。
なお,子どもや孫が亡くなっていた場合,ひ孫が相続人となり,これを再代襲相続といいますが,甥や姪が亡くなっていた場合の再代襲相続は現行法上認められていません。

 

●連絡が取れない相続人がいる場合
連絡が取れないといっても様々な状態があります。
単に疎遠な関係で現在の連絡先が分からないという場合は,住民票や戸籍の附票を取り現住所が分かればそこに手紙等を送付して相続が開始された事実を伝えることになります。
次に,住民票等を調べても現住所が分からない行方不明の人がいる場合は,次の二つの方法により遺産分割協議をすることになります。

 

●不在者財産管理人の選任
行方不明の相続人について,家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらい,不在者財産管理人に遺産分割協議に参加してもらう方法です。
不在者財産管理人の選任の申立ては,不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所に行います。

 

●失踪宣告の申立て
行方不明の相続人について,「その生死が7年間明らかでない(普通失踪)」,「震災などの危難が去った後その生死が1年間明らかでない(危難失踪)」場合,家庭裁判所に失踪宣告の申立てを行う方法です。
失踪宣告が確定すると,行方不明の相続人は,死亡したものとみなされその者を除いて遺産分割協議を行うことが可能になります。
失踪宣告が確定するまでには1年程度の期間を要するため,相続税の申告期限内(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)に手続が完了しない可能性が高い点にはご注意ください。
そのため,早急に遺産分割協議を成立させる必要性がある場合には,併せて不在者財産管理人の選任申立てを行うこともあります。
失踪宣告の申立ては,不在者の従来の住所地又は居所地の家庭裁判所に行います。

 

●認定死亡
失踪宣告と似た制度として,認定死亡というものがあります。
認定死亡は,災害等のため死亡したことは確実であるが,遺体を発見できない場合に,警察や海上保安庁等の官公庁による死亡の報告によって,その者を死亡したものと扱う戸籍法上の制度です。
認定死亡により戸籍上死亡したものと扱われると,相続が開始されます。

 

 

遺産分割協議は,相続人全員で行う必要がありますが,相続人全員が近しい人であるとは限りません。
面識がない相続人や相談者の方のように連絡が取れない相続人がいることも珍しいことではありません。
しかし,そのような場合でも,遺産分割協議を進める方法はありますのでご安心ください。
どうしても分からないことがある場合は,一度弁護士に相談してみてください。