以前は,嫡出でない子(※法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子。婚外子。)の相続分は,嫡出子(※法律上の婚姻関係にある男女を父母として生まれた子)の相続分の2分の1とされていました。
しかし,平成25年9月4日,最高裁は,嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする民法990条4号ただし書(以下「本件規定」といいます)について,法の下の平等を定める憲法14条1項に違反し無効であると判断しました。
これを受けて,平成25年12月5日に,本件規定を削除する旨の民法の一部を改正する法律が成立し(同月11日施行),嫡出でない子の相続分が嫡出子の相続分と同じになりました。
(以前)
嫡出子・A 400万円
嫡出でない子・B 200万円
↓
(現在)
嫡出子・A 300万円
嫡出でない子・B 300万円
これは,最高裁が決定を出した平成25年9月5日以後に開始した相続(平成25年9月5日以後に被相続人が死亡した場合)について適用されます。
但し,平成13年7月1日から平成25年9月4日までの間に相続が開始した場合でも,平成25年9月5日以後に遺産分割をする場合は,嫡出子と嫡出でない子の相続分は同じものとして扱われます。
(既に,平成25年9月4日以前に遺産分割協議や裁判が終了している場合は,その効力は覆りません。)
上記のように,嫡出でない子の相続分は嫡出子の相続分と同等となりました。
しかし,それは,嫡出でない子が「認知」をされて法律上の親子関係が発生している場合であり,認知をされていないと相続する権利はありません。
認知とは,父が,婚姻外の子供を自分の子供であると認めることであり,これにより生物学上の父子関係が法律上の父子関係になります。
認知の効力が発生するためには,役所への認知届出が必要です。(母の場合は,分娩の事実により親子関係が当然に発生するため,原則として母の認知は必要ありません。)
認知には,以下の方法があります。
父が自ら行う認知のことで,役所へ認知の届出をします。
子供が未成年の場合→ 子供や母親の同意は不要。
子供が成年の場合 → 子供の承諾が必要。
※認知は遺言によっても行うことが出来ます。(遺言認知)
遺言執行者が認知届出をしますが,遺言執行者の指定がない場合は,家庭裁判所への遺言執行者選任の申立が必要です。
※お腹に赤ちゃんがいる状態でも認知を受けることができます。(胎児認知)
この場合は,母の承諾が必要です。
※死亡した子でも,その子の直系卑属(子,孫など)があるときに限り認知することができます。(死後認知)
直系卑属が成年の場合は,その承諾が必要です。
父が任意に認知をしないときに,嫡出でない子や,直系卑属又はこれらの者の法定代理人が訴えによって父の認知を求めることです。
調停前置主義により,まず,家庭裁判所に認知を求める調停を申し立てる必要があります。
※父の死亡の日から3年を経過したときは提起できません。
※父の死後でも3年間は裁判所へ認知請求をすることができ,請求が認められれば法律上の親子関係が生じます。認知の効力は出生のときに遡りますから,その結果,相続関係があったことになり,遺産分割を請求する権利も得られることになります。
なお,認知をされると,子の出生時に遡って相続権が発生するだけでなく,扶養請求権も発生します。
養育費を請求するためにも,認知は必要なものとなっています。
認知請求や養育費の請求,遺産分割など,お子さんをめぐる様々な問題については,親として,子として,色々と大変な思いをされているかと思います。
依頼者の方にとって,より良い解決ができるよう,これからも取り組んでまいりたいと思っております。