ニュース

Q.家族信託における受託者の義務について教えてください。

家族信託において「受託者」は,委託者から託された財産を管理・処分する人です。
信託法上,受託者には次の義務が課せられています。

①信託事務遂行義務
②善管注意義務
③忠実義務
④公平義務
⑤分別管理義務
⑥第三者の選任・監督義務
⑦信託処理状況等の報告義務
⑧帳簿等の作成・報告・保存義務

それぞれの義務の内容は下記のとおりです。

①信託事務遂行義務
家族信託は,特定の目的をもって設定されるものですから,受託者は当該目的を達成するために信託事務を処理しなければならないというものです。

②善管注意義務
受託者は,通常要求される注意義務をもって信託事務を処理しなければならないというものです。
この義務は,信託行為の定めによって増減することが可能ですが,全面的に免除することはできません。一切注意義務を負わない受託者というのは,信頼関係を基礎とする信託制度にそぐわないからです。

③忠実義務
受託者は,受益者のため忠実に信託事務を処理しなければならないというものです。
そのため,受託者による利益相反行為や競合行為は制限されています。

④公平義務
受託者は,受益者が2人以上いる信託の場合,公平に職務を行わなければならないというものです。

⑤分別管理義務
受託者は,信託財産と自分の財産を分別して管理しなければならないというものです。
信託財産は,受託者の財産ではありませんから,自分の財産と混同しないように管理することが重要となります。
分別管理の方法としては,
・不動産…信託登記をして管理
・動産…外形上区別することができるように管理
・金銭その他…帳簿等により計算を明らかにして管理
となります。
実務上,金銭を信託する場合,「信託口口座」という専用の口座を開設して分別管理することが多いです。

⑥第三者の選任・監督義務
受託者は,委託者からの信頼に基づいて信託財産の委託を受けているため,受託者自身が
信託事務を処理するのが基本ですが(自己執行義務),信託行為に第三者に委託できる旨の定めがある場合や第三者に委託することが信託の目的に照らして相当である場合など一定の場合には,第三者に委託することが認められています。
その場合,委託者は,信託目的に照らして,適切な者に委託しなければならず,また,必要かつ適切な監督を行わなければならないというものです。

⑦信託処理状況等の報告義務
受託者は,委託者や受益者から求められた場合,信託事務の処理・信託財産等の状況について報告する義務があるというものです。

⑧帳簿等の作成・報告・保存義務
受託者は,信託財産に係る帳簿その他の書類を作成しなければならないというものです。
また,受託者は,年に一度,一定の時期に,貸借対照表,損益計算書その他の関係書類を作成しなければなりません。

 

家族信託について,さらに詳しくお知りになりたい場合は,下記ページをご参照ください。

(家族信託)
→ https://www.kobe-hidamari-law.com/consult/senior/892/