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Q.家族信託をすれば遺言はしなくてよいのでしょうか。また,家族信託と遺言とではどちらが優先するのでしょうか。

家族信託と遺言は,財産承継という目的の面で共通します。

しかし,家族信託と遺言では,効力発生時,財産の承継方法,撤回の可否など異なる点も多くあるため,家族信託でカバーできる部分と遺言でカバーできる部分とが完全には重なりません。

そのため,家族信託をすれば遺言はしなくてよいのかというご質問の回答としては,家族信託では対応できない部分をカバーするため,遺言もしておいた方がよいということになります。

では,具体的にどのような部分を遺言でカバーするのか見ていきましょう(なお,遺言と家族信託の違いをもっとお知りになりたい場合は,下記ページをご参照ください)。

(Q.遺言と家族信託の違いを教えてください。)
→ https://www.kobe-hidamari-law.com/news/qa/blog-senior/977/

 

●家族信託の対象にしていない財産をカバーする
家族信託では,例えば財産の内,賃貸マンションなど特定の財産だけを信託の対象にすることが可能です。
そのため,家族信託が対象としていない財産について,遺言で定めておいてカバーすることになります。

●遺言でしかできない部分をカバーする
祭祀承継者の指定や,子の認知などは,家族信託ではできません。
そのため,家族信託ではできない部分を遺言でカバーすることになります。

 

(家族信託と遺言の優先関係)
家族信託と遺言とが両方なされている場合でも,両者に矛盾がなければ特に問題はありません。
では,家族信託と遺言とで内容が抵触する部分がある場合は,どちらが優先するのでしょうか。

結論としては,家族信託が優先することになります。

家族信託によって信託財産となった財産は,委託者(遺言者)の固有財産ではなくなります。
そのため,家族信託をした後に遺言をした場合,家族信託の対象となった財産には遺言の効力は及ばないのです。

また,遺言は,いつでも撤回可能で,時系列的に後に作成されたものが優先します。
そのため,遺言をした後に家族信託をした場合,内容が抵触する部分は,後から作成された家族信託が優先するのです。

家族信託と遺言の両方をする場合,両者の間で解釈等に疑義が残らないような内容にすることは,紛争を防止するためにも重要です。
そのため,家族信託や遺言をしたいとお考えの場合,まずは弁護士にご相談ください。

家族信託について,さらに詳しくお知りになりたい場合は,下記ページをご参照ください。

(家族信託)
→ https://www.kobe-hidamari-law.com/consult/senior/892/